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菱沼 章道; 高木 清一*; 安彦 兼次*
Physica Status Solidi (A), 189(1), p.69 - 78, 2002/01
被引用回数:13 パーセンタイル:55.67(Materials Science, Multidisciplinary)高クロム鉄基合金またはクロム基合金は、現在の代表的工業材料であるオーステナイト鋼やフェライト鋼に比べて優れた高温強度と耐食性を有し次世代の有力な先進材料の一つである。しかしながら、これらの材料は一般的に脆いという大きな欠点があり、その本質的な開発研究はこれまでほとんど行われてこなかった。しかし、最近この脆性が高純度化によって克服される可能性が示され、これらの合金の開発研究が本格的に開始されようとしている。また、原子力材料への応用でも、優れた低放射化性や熱伝導度などから注目されつつある。本レビュー報告書では、クロム基合金を中心に、その魅力ある特性を従来材と比較して概括する。同時に、耐熱合金、耐食材料、原子力材料への適用の可能性及び高純度化によるその脆性の克服に関する現状と今後の展望を概説する。
若井 栄一; 菱沼 章道; 阿部 弘亨; 高木 清一*; 安彦 兼次*
Materials Transactions, JIM, 41(9), p.1176 - 1179, 2000/09
鉄イオン照射下で高純度Fe-(18-50)Cr, Fe-50Cr-(5-8)W合金の組織発達と相変態挙動を調べた。薄膜試料を用いて、透過型電子顕微鏡内で300keVの鉄イオン照射を行い、組織の発達過程をその場観察した。また、時効した組織も同様に調べた。Fe-Cr合金では500C照射で転位ループが観察されたが、析出物形成は観察されなかった。Fe-50Cr-W合金では照射によって、転位ループが形成したが、ラーベス相が550700Cの範囲で形成した。低温側では1分程度でラーベス相が形成した。また、670800C照射では相が形成した。これらの析出物形成の原因を調べるために、粒界近傍の溶質原子の偏析を調べたところ、相が形成されない温度ではCr濃度が低下し、W濃度が増加したが、相が形成する温度ではこれらの濃度変化がみられなかった。他方、熱処理のみではラーベス相が短時間では形成しないことや700Cで1000時間時効しても相が形成しないことから、照射により引き起こされる局所的な濃度変化や拡散速度の上昇がラーベス相の形成を著しく促進させ、また、相形成にも大きな影響を及ぼしたと考えられる。
安彦 兼次; 高木 清一*; 加藤 章一; 永江 勇二; 青砥 紀身; 斉藤 淳一
JNC TN9400 2000-059, 43 Pages, 2000/05
本研究では、現状技術で製作可能な高純度鉄および高純度鉄基合金の材料諸特性を把握し、先進的高速炉の構造材料および機能性材料への適用見通しを得ることを目的とする。そこで、まず10kg程度の高純度鉄及び高純度鉄基合金を超高真空対応のコールドクルーシブル溶解炉を用いて溶製した。次に高速炉の特徴である高温ナトリウム環境と高純度鉄および高純度鉄基合金との共存性、常温および高温における引張特性について検討した。また、高純度鉄基合金の高速炉構造材料に特化された性質の一つである高温クリープ特性を調べるために550におけるクリープ試験を行い、その特性を評価した。さらに、高純度鉄の基本的材料特性である熱膨張係数や比熱、電気比抵抗などを測定し、機械的特性等含めて高速炉構造材料への見通しを評価した。特性試験および評価より以下の結果が得られた。(1)超高真空対応のコールドクルーシブル溶解炉を用いて10kg程度の高純度鉄および高純度50%Cr-Fe合金を溶製することができた。(2)常温および高温における変形挙動を理解するために高純度50%Cr‐Fe合金の引張試験を行った。その結果、高純度50%Cr-Fe合金は高温においても高強度でかつ延性を有していることがわかった。(3)高純度50%Cr-Fe合金の物理的特性(熱膨張係数や比熱等)を測定した。高純度50%Cr-Fe合金の熱膨張係数はSUS304よりも小さく、高速炉構造材料として有望であることがわかった。(4)ナトリウム腐食試験の結果、普通純度鉄は重量減少を示したが、高純度鉄は重量増加を示した。また、普通純度鉄は粒界近傍に著しい腐食が生じていたが、高純度鉄は粒界にも腐食は生じていなかった。(5)高純度50%Cr-Fe合金の550でのクリープ試験を実施した。その結果、短時間側で高純度50%Cr-Fe合金のクリープ破断強さは改良9Cr-1Mo鋼よりも高強度であるが、長時間側では同程度の強度であった。一方、クリープ破断伸びおよび絞りは改良9Cr-1Mo鋼より若干低下した。
若井 栄一; 菱沼 章道; 沢井 友次; 加藤 康*; 磯崎 誠一*; 高木 清一*; 安彦 兼次*
Physica Status Solidi (A), 160(2), p.441 - 448, 1997/00
被引用回数:15 パーセンタイル:66.71(Materials Science, Multidisciplinary)鉄-クロム系合金を使用する際の注意点の一つとして'相の析出と関連した457C脆性がある。この'相の析出は、また中性子照射によっても大きく影響を受ける。本研究では純度の異なる鉄-クロム系合金(9Crから30Crまで)を中性子照射し、引張特性の変化を調べ、また照射によるミクロ組織変化の観察と併せて解析を行っている。一般に照射によって合金の強度は増加し、延性は低下した。照射によるこの強度の増加は、不純物濃度、クロム濃度が高い試料ほど著しかった。763Kでは、引張試験中に急峻な応力の低下が見られた試料もあり、これは高純度で高クロム濃度の試料で著しく、また'様の析出物はこれらの試料でよく観察された。電子顕微鏡観察では、この析出物が照射によって形成された転位ループ近傍に優先的に発生していることが認められた。